【インタビュー】一流のアスリートたちと最先端のスポーツ科学研究を楽しむ

彼末 一之/スポーツ科学学術院教授

 子どもの頃からスポーツが好きで、高校から大学にかけては陸上部で走り幅跳びに青春をかけていました。大学3年の冬に札幌オリンピックが開催され、日本全体で盛り上がりましたが、私も走り幅跳びの10倍以上も跳ぶことができるジャンプ競技に興味が湧き、スキー部に入部しました。するといきなりジャンプ台に連れて行かれ、一度も練習をせずに跳ぶことになりました。ところが初めての挑戦は、空中に飛び出した瞬間にいつもの走り幅跳びの癖で足をこいでしまい、着地に失敗して骨折という散々な目に。それでもめげずに翌冬も試合に出場しましたが、そこで人生初のビリを味わいました。

一方、鉄道模型やステレオ作りが好きで、大学は電気工学を専攻しました。スポーツを通じて、人間の体をコントロールする生体機能にも興味を持ち、生体解析の研究室があった大阪大学工学部の大学院に進学。その後医学部に職を得、体温調節の解析をテーマに充実した研究生活を送っていましたが、スポーツの研究をしたいという夢はずっと持ち続けていました。早稲田大学のスポーツ科学部で仕事ができるようになって、本当に幸運だと思っています。

先日、テニス中に肉離れを起こし、1時間後に所沢キャンパスにある研究用のMR装置で撮影した画像です。白い部分は出血です。

スポーツ科学の面白さは、一流の選手の鍛え抜かれた運動能力を目の当たりにできることです。医学では、疾患や障害などマイナスになった部分から人間の正常機能を研究しますが、スポーツ科学ではトップアスリートが常人にはできない動きをするプラスの部分を見て、正常機能を研究しています。現在の主な研究は、運動制御の神経機構解析です。一流選手は、子どもの時から良い環境でトレーニングを受けていることがほとんどで、これは筋肉だけでなく脳のトレーニングが大切なことを意味します。また、「運動神経」がよいとは利にかなった動きを真似できるということでもあります。真似をするときの脳の働きに関わっていると考えられているミラーニューロンという神経細胞の働きについても研究を進めたいと思っています。

このたび、文部科学省のグローバルCOEプログラムの支援対象に、スポーツ科学研究科の「アクティブ・ライフを創出するスポーツ科学」が選ばれました(NEWS REPORT参照)。これは社会がスポーツに大きな期待を寄せていることの表れではないでしょうか。子供の体力向上や中高年の健康増進は世界的な課題です。大切なことは、人々が楽しんで運動できる機会を創出することです。スポーツ科学科が、科学的に高い専門性を持った人材を育成し、スポーツを学問として教育・研究し、社会に還元する拠点となるように学生たちとともにこのプログラムを盛り上げていきたいと考えています。

最後に、スポーツ“科学”を研究する立場としてこんなことを言うのも何ですが、何かを成し遂げるのに必要なことは“努力”と“根性”しかないと思っています。何事にも時間をかけて、じっくり取り組んでいきたいですね。